ヴィジョン・オブ・アオモリvol.11「澤田サンダー echo」

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八歳の時の大晦日に、私は父の運転する車で浅虫あたりの海岸沿いの道を走っていました。そのとき、ある出来事に遭遇しました。そしてそれを最近、海外に行った時に日本のAVやホラー映画を外国人が熱心に語るのを見て思い出しました。
(澤田サンダー)

 

[作品解説]
澤田サンダー《echo》――寓話的なホラー映画
近藤由紀(国際芸術センター青森 主任学芸員)

1976年弘前市生まれの澤田サンダーは、今回の展覧会にあたり、生まれ故郷である青森の記憶をひっくり返し新作を作ったという。記憶をひっくり返して出てきた小さなきっかけは、青森で撮影されることでこの土地の風景と結びついた作品として発表された。無言の登場人物の背景のみならず、まるで彼らの言葉とでもいうように森や夕空、凪いだ海といった静謐で美しい自然の風景が印象的に挿入される。一方でその美しい風景は、主人公の身に起こったことやその結末に影響されて、独特の湿り気と闇を帯びているように見えてくる。土着の信仰や風習と結びつくからだろうか、あるいはマスコミが作るクリシェ的な青森像の影響だろうか。美しさの裏側に特有の闇を抱えているようにみえる景色をこの土地の在り様と結びつけることで、それは単なる風景以上の風景となる。それは一方でどこか作家のこの土地に対する歪んだ愛情を思わせる。だが澤田の作品はそう単純なつくりにはなっていないし、青森の地域性を背負って作品制作をしているわけではない。

《惑星のささやき》(2011年)、《私は知ってる、私は知らない》(2013年)などの映画作品を監督している澤田だが、その他にも舞台、シナリオ、絵本(1)の文章などを表現手段としており、澤田の作品ではいわゆるストーリーテリングが重要な軸となっている。そこではしばしばハリウッド映画やテレビドラマで用いられるような映像の文法やクリシェが意識的に使用されている。そしてその作品をまとめ上げる一つのストーリーに様々な情報を組み入れ、階層構造をもった物語を仕立てあげていく。そして多くの場合その背後には、構造的暴力に押しつぶされ、社会の片隅に置き去りにされ、うめき声をあげる者のもう一つの物語が並行して存在している。

今回の《echo》は澤田によると、「助かった、と思ったが、実はもう終わっていた。ゾンビのなりぞこないのように肉体的に始まった女の旅が、最後には実体のない霊として終わっていく」(2)女性の物語であるという。それは第一層としては美しい風景とあいまった幻想的な死人の物語としても成立する。澤田はそこに澤田の解釈によるアダルトビデオやホラー映画における女性像を重ねることで、「現代社会における女性」の存在を指し示そうとする。死人の女性が象徴しているのは、社会構造の中で押しつぶされてゆく女性であり、澤田はこの映画のもう一つの物語として、組織や会社が崩れかけているときに代表として祭り上げられる女性の姿を描き出したかったという。なるほど、そうやって物語を見直すと、あらゆる部分が連鎖的に別の意味を持ち始め、ホラー映画は別の残酷物語を語り始める。だが一方であまりに表面のストーリーが確固としているために、その裏側を知らなくても、作品鑑賞に問題はない。鑑賞者は幻想的な幽霊話をただ堪能しながら、サブリミナル効果のようにこの裏の物語が刷り込まれていくのだろうか。あるいは大人になってからイソップ童話の本当の意味を知るように、ふとした機会にそのつながりに気付くのだろうか。断片的な象徴の寄せ集めとしてではなく、視点の変更により全く別の物語が成立し始めるそれは、現代の寓話や童話として社会を風刺する。

(1)『幼なじみのバッキー』第10回岡本太郎現代美術賞入選作品。月曜社より出版。
(2) 2015年1月17日澤田サンダー《echo》についてのコンセプトシートより。

《echo》より
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澤田サンダー
1976 青森県弘前市生まれ
2000 東京経済大学コミュニケーション学部コミュニケーション学科卒業
2012 東京芸術大学大学院映像研究科修士課程映画専攻修了

2006 「SAZANAMI MOVIE EXHIBITION」、IID世田谷ものつくり学校、東京
2007 「岡本太郎現代芸術賞展」、川崎市岡本太郎美術館、神奈川
2007   「ARTLAN@AISA」、横浜ZAIM、神奈川
2007   「和解と和合の韓・日展」、Gallery Ewha、ソウル/韓国
2008 「はじめての食事」、渋谷ギャラリールデコ、東京
2008   「バッキーのリベンジ未遂!!」、銀座芸術研究所、東京
2008   「エコアジア二ズム」、ハイアットリージェンシー大阪、大阪
2009 「現代○美術 Nine Japanese contemporary artists’ exhibition」、ザルツブルグ博物館、ザルツブルグ/オーストリア

受賞
2010 伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞中編の部大賞
2010   函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞審査員奨励賞
2012 福岡インディペンデント映画祭優秀作品賞

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日時
2015年2月7日(土)~3月15日(日)10:00~18:00
会場
AVルーム
対象
無料
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