■ 2002年 秋のアーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラム
 


 
プログラムテーマ ジェンダーとグローバリズム/柔らかな普遍性
 



参加アーティストと作品 | プログラムデータ |  その他の活動 | 観覧者の感想

 

参加アーティストと作品

■  アドリアナ・サ(Adriana SA)
 音を光や動きによってコントロールさせる作品を制作。知覚の「衝突と融合」を探求しつつ、 音、空間、場所、動き、意味の間の構造的な関係を問うものとして制作された。
 本展ではギャラリーBにて、刻々と変化する天候や鑑賞者の動きによって、 音や光が変化するサウンド・インスタレーションを発表。

<展示作品>
・「パララックス(視差)#1」パフォーマンス=インスタレーション(パラメディア・インターメディア/光と音の楽器、空間、身体)

 この作品は、空間的に光、身体の動き、音の連鎖が構成された空間そのものを体験する部屋である。 鑑賞者は、日本の伝統建築に見られる「雪見障子」のようにしつらえられた窓からテラスの水面を眺め、 余計な情報を取り去り、日の光を感じ、音を聞くことになる。
 窓に設置された光センサーが、日中は雲の流れや風に揺れる波によっておこる光の微細な変化を捉え、 事前に採取されたテラスの水音に4つの要素による変調を加える。
夜になり外が暗くなると、ギャラリー内に吊り下げられた蛍光灯とそれに向かい合った光センサーによって、 女性の声(アドリアナ自身の声)のピッチをコントロールし、蛍光灯とセンサーの間に人が立ったり手をかざしたり、 蛍光灯を揺らしたりすることで音が変化するように作ら、このシステムを用いて毎週土・日曜日の夜にパフォーマンスが行われている。
 タイトルの「パララックス」とは見るものと見えるもののズレを意味する用語である。


■ ジークリンデ・カレンバッハ(Siglinde KALLNBACH)

人々との交流によるパフォーマンスから作品を制作。近年は、がんに苦しむ人との連帯を示す活動「performancelife(パフォーマンスライフ) 」(http://www.a.perfomancelife.com)及び笑いのエクササイズを行うパフォーマンス("Alive - Laugh - Sculpture" Project) と題した活動を各国で展開中。本展では、パフォーマンスで使用したスーツや青森で見つけたチラシなどをコラージュした作品を発表。

<展示作品>
・「パフォーマンス ライフ:シュラインズ(瞑想の場)」インスタレーション(ドローイング(墨)、コラージュ、写真、綿スーツ、ビデオ)

 白いスーツに書かれた署名は、滞在期間中、10月4日、5日に青森市で開催された「日本女性会議」の会場をはじめ、あらゆる場所で集めたものである。これは健康な人と癌を患っている人の間の「連帯」を、署名の形で表したものである。癌にかかると人々は、孤独を感じる。しかし癌は誰にでも起こりうる病気であり、決して1人の問題ではない。こうした人々の思いや力を2005年まで世界中で集め、最終的に1つの作品にする予定である。 鳥居のように掲げられた2対のスーツ、背後の絵画作品に作者のこのような思いが込められている。
 また、向かって右手につくられたスペースは、日本の伝統文化を母娘で学ぶ場に立ち会った体験を作品として再現し、現代芸術と伝統文化の融合を示したものである。

■ イベット・ポーター(Yvette POORTER)

 展示空間という非日常的な空間に居間を模した日常空間を再現。
 展示作品に使用しているTVモニターで上映している映像は、10月7日正午から10月11日午後4時までの計100時間の間、 青森市中心市街地にあるギャラリー「NOVITA」のショーウインドーにて1時間に1回行われた計101回の「でんぐり返し」 パフォーマンスの記録であり、「時間」を主題とした作品でもある。

<展示作品>
・「メタ・プレイス」彫刻(ミクストメディア)

 ギャラリーA受付外側に設置されているTVモニターの映像は、1時間に1回、計100時間分(昼夜問わず) のでんぐリ返しを行っだパフォーマンスの映像である。景色の変化、観客の動きに100時間の経過を感じることができる。また作者はこの「でんぐり返し」という行為をさまざまな速度に加工している。このように時間を縮めたり、延ばしたり、時にはリアルタイムな映像を使用することにより、100時間という時間の経過を鑑賞者に提示している。
 また、ギャラリーA入口にひっそりと置かれている「荷物」一作家は「彫刻」と呼ぶーは、組み立て式の家であ る。この家は週末のみ組み立てられ、家の中で作家自身がパフォーマンスを行った。単なる「もの」が「彫刻」と呼ばれることで「作品」になる。組み立てられた家も、中で行われるパフォーマンスは非常にありきたりなことであるのに、そこに立ち入り禁止の柵が設けられることにより、「作品」へと変化する。普通は気がつかないようなことが、美術館で「作品」らしく見せかけることによって作品になる。作品になったとたんこれらの作品は「展示空間」を持つが、気がつかなければ何の空間も持たない。そうした意味で彼女はこれらの作品に「メタプレイス(超越的空間)」というタイトルをつけた。また、展示棟の全エリアに、膝の高さに鉛筆の線を描いた(これは一部ギャラリー入口などに残っている)



■ ニラン・バイブラット(Niran BAIBULAT)
人々の記憶をつむぎ合わせるように、壊れた日用品や古着など、打ち捨てられ、 忘れ去られたようなさまざまな素材をかぎ編みでつなぎ合わせた作品を制作。本展では青森市内のフリーマーケットで入手した古着に、 松葉を編み込んだ作品を発表。

<展示作品>
・「ボディスケイプ」インスタレーション(松葉、服)

 フリーマーケットで集めたレース状の古着に松葉を縫い付けて作品を制作。 網目や縫い目に松葉を埋め込み、人が着用していたかのような形を復元することにより、古着は新たな生命を与えられる。 これらはあたかも身体が復元されたようにも見えるが、一方でまた別の何かにも見える。また今回は実際の作業場も展覧会場に 設置されている。作者にとって作品を作るという過程も重要なことである。芸術とはすなわち生活であり、人生である。 人生は終わらずに続いていく、したがって彼女の作品制作も完成を迎えずに続いていくのである。 今回の作品は市民ボランティアの方々とともに制作された、共同作品でもある

■  アシュミナ・ランジット(Ashmina RANJIT)

 女性の身体に着目し、男性の視点とは別の女性の「セクシュアリティ」や「女性らしさ」、「社会性」について追求。本展では、展覧会前に開催されたワークショップにおいて参加者が描いた「女性であることの喜び」の表現を展示。衣服には、女性の身体や女性特有の動きなどを記録した映像を投影した。

<展示作品>
・「アップリフト」インスタレーション(布、絵具、顔料、てぐす、プロジェクター)

  作品の大きな主題は女性自身による女性存在の喜びを表現することにある。特に女性のアイデンティティ(独自性)、セクシュアリティ(女性性)、インディビジュアリティ(個性)の表現を重視している。白いドレスは、女性の身体を象徴しており、そこに描かれている絵は展覧会開催前に行われたワークショップにおいて、下は5歳から上は70歳くらいまでの方々が自分自身を表現した絵である。展示されたドレスの全体像である逆三角形の形は、タントラ教(ヒンドゥー教の一種)で女性のシンボルであり、同時に流れる水を表している。床にある砂絵は同じくタントラ教のシンボルで、女性の力やエネルギーを表す。女性たちの個々の表現をこうしたネパールの伝統的な女性のシンボルで形作ることにより、女性という一つの宇宙を作り出そうとしている。

■ 広田美穂(ひろた・みほ)

場や人との出会いから触発されたものを題材として選び、そこで得た素材や出会った人々と自分自身の関わりを検証、リサーチしながら作品を制作する。本展では、「ねぶたの里」近くのりんご園にて、りんごの収穫にたずさわりながら、りんごについて調査するとともに、青森の民俗的背景についても調査した。そこで得た出会いをインスタレーションとして発表。

<展示作品>
・「Eat or Shoot」インスタレーション(割り箸、輪ゴム、缶、金具
・「ここで」インスタレーション(プリント(写真)、箱、資料、りんご、布)

 <EAT OR SHOOT>
 この作品において、作家は「食べるために使う箸が銃になったらどうだろうか?」という問いかけをする。食べるという行為は、平和の象徴でもあり、そしてその道具としての箸は高度に文化的な産物でもある。一方で世界には食べるために銃を取らなければならない国がある。また我々がこうして当たり前に行っている、食べるという行為が、間接的にどこかの銃と関係性を持っているかもしれない。 平和で当たり前と思っている状況に「銃」を持ち込むことで、人々にこうした問題を喚起させ、 日常性の中に潜む闇に光を当てている。
 <ここで>
 作者が青森に来てから調べたさまざまな「青森」の様子や、休験したことをぼんやりとしたイメージとして、あたかも日記のように作品にした。展示で使っているり んごはねぶたの里近くのりんご園に週一度通い、作業のお手伝いをしていただいたりんごである。


■ 佐藤佳代(さとう・かよ)

 日記、インタビューといった方法を用いながら刻々と変化する「今」をとらえて、内と外、 虚と実、自己と他者の間での揺れ動きを表現する作品を制作。本展でのテーマは「のぞき(peeping)」。扉にあけられた覗き穴から みる世界と、こちら側の世界との関係を表現する。ギャラリーでの展示の他、宿泊棟の自身の部屋を展示スペースとして発表する。

<展示作品>
・「ピーピングピーポー、ピーピングピーホー〜視線の果て(自身を超えて)」インスタレーション(ミクストメディア
・ 「ピーピングピーポー、ピーピングピーホー〜視線の果て(時間を超えて)」インスタレーション(拡大コピー、ビデオ、ドア、ドアスコープ)

 作品は覗き穴から覗くことによってみることができる。この作品は覗くという行為によって「見る」ということ を際立たせる。覗き穴の先に見えるのは、現実の風景ではなく、全く別の世界である。見えるはずのモノが見えず、見えないはずのものが見えるということが、この展示作品ではおこるのである。また展示空間という「美術鑑賞の場」だけで「覗きみる」のではなく、作家は宿泊棟の自分が実際に生活している空間も「覗かせる」。あまりにも現実的な「覗く」行為であるが、ここから見える映像もまた現実ではない。
展覧会タイトルである「ジェンダーとグローバリズム」は、彼女に家を連想させた。展示作品にはさまざまな「家」が形を変えて表れている。


■ 山内ゆり子(やまうち・ゆりこ)

 色彩豊かな作品を特徴とする。近年では平面にカラフルな毛糸をコラージュした作品のシリーズを展開。 本展では、変形キャンバスを用いた、色と素材のコンポジションをギャラリーに展示。

<展示作品>
・「ワンダーランド」インスタレーション(変形キャンバス、アクリル絵具、毛、毛糸、樹脂

 色を使って感情や思いを表現しようとした作品である。 今回は特に布や毛糸を多用し、それらの素材感をも表現に取り入れる試みを行った。白い壁をキャンバスのように使い、色彩を点在させたコンポジションによって、遊び心溢れる軽やかな空間を表現した。
 また、左側の壁に飾られたCDケースは、身の回号にあるものや、作家自身のお気に入りを使い、日記を綴るようにその時々の出来事や思いをコラージュしたものである。


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